ポケカを始めたきっかけを教えてください。
もう昔のこと過ぎてしっかりとは覚えていないのですが、小学校に入る前くらいから触れていた気がします。いま覚えているいちばん古い記憶は「ポケモンワールドチャンピオンシップス
日本代表決定大会 1stステージ
全国47都道府県予選」です。2009年から参加し始めて、2010年に優勝したんです。それがきっかけでポケカを競技として意識し始めて、ジムチャレンジ(現:ジムバトル)にも参加するようになりました。
ジムチャレンジよりも先に大型大会に参加して優勝……? とくに練習をしていたとかではないんですか。
家で弟や両親と遊んでいたくらいです。もともとアーケードゲームの『ポケモンバトリオ』を遊んでいて、そちらでも大会で優勝するくらいハマっていました。その仲間がポケカもやっていて、強いデッキを教えてくれたんです。当時は30枚デッキでの対戦だったこともあって、実力差が影響しづらかったのだと思います。実際、東京代表として参加した全国大会では60枚デッキでの対戦だったのであまり勝てませんでした。レベルの差を思い知らされましたね。その悔しさで、より夢中になっていきました。
長年の経験がものを言う
精確なプレイングと独創的なデッキ構築
得意な戦いかたを教えてください。
プレイ歴が長いぶん、多種多様なデッキを使った経験があるので満遍なくどんな戦いかたもできると思っています。それは自分でも強みだと認識しているので、一般的にプレイ難度が高いといわれるデッキを好んで使う傾向があると思います。
プレイング面で人と差を付けられると。
そうですね。もしくは、誰も注目していないようなデッキを組んで使うことも多いです。たとえば「チャンピオンズリーグ2019
東京」で予選全勝したグランブルのデッキとか。最近だとハピナスVとチルタリスのデッキやリバーサルエネルギーを軸にしたサーナイトexのデッキなんかもそうです。最近は結果を残した強力なデッキの情報がいくらでも手に入りますが、それだけを信じるのではなく自分で1からデッキを作るということは意識してやっています。
デッキは必ず1から自分で組み上げる
重要なのは対戦後の分析と調整の継続
デッキ作りで大事にしていることを教えてください。
改めて言葉にするのはすこし難しいですね……。小さいころから当たり前のように自分でデッキを作り続けているので、最初の60枚は自然と出来上がっちゃうんです。ただ、この60枚って別に強くなくて。全然うまく回らないこともザラにあります。ひたすら対戦して負けた原因を分析しながら1枚ずつ入れ替えていくことが大事です。対戦を振り返って反省する際にプレイングの改善点を探すことも重要ですが、同じくらいデッキ構築の反省も大切なことです。「あのカードがあれば勝てたかもしれない」とか「このカードは使っていないな」みたいな分析は必ずするべきだと思います。
イトウ選手といえば、先ほども話題に挙がった独創的なデッキ構築が有名です。ああしたアイディアはどのように生み出されるのですか。
出発点はあまりほかの人と変わらないのではないでしょうか。カードリストを眺めて、強そうだなとか使ってみたいなと思ったカードがあればすぐにデッキを組んでしまいます。重要なのはとにかくいろいろなデッキを使って経験を蓄えることと、対戦を重ねてデッキをどんどんブラッシュアップしていくこと。ある程度デッキが出来上がってきたと思ったら、だれか別の人に使ってもらうのもいいですね。自分だけでは思いつかない発見を得られることがあります。
デッキに入れたオリジナルの隠し味に注目!
自身のプレイヤーとしての特徴はどんなところだと思いますか?
やはりデッキ構築が独特なところだと思います。同じデッキどうしでの対戦は、こちらが100点の動きをしたとしても相手が同じように100点のプレイなら勝てない可能性があるというのが嫌で。だから人とは違うデッキを作って持ち込むようにしています。「CL2025
宮城」では使用率の高いドラパルトexのデッキを使いましたが、あれも当時は珍しかったガチグマ アカツキexがミラーマッチで有利に働くことが分かっていたから使用に踏み切れました。
グランブルのようにデッキコンセプトが独創的な場合もあれば、一見流行のデッキだけれどオリジナル要素がワンポイント隠れている場合もあるわけですか。今後配信卓でイトウ選手を見る際には要注目ですね!
勝率は完全に50%!
コイントスで決着した伝説の決勝戦
いちばん印象に残っている大会は何ですか?
いまは「チャンピオンズリーグ2025 宮城」(以下、「CL2025
宮城」)の印象が大きいです。優勝したことも嬉しいですし、決勝戦の決着がコインで決まるというのも衝撃的でした。長年ポケカをやってきていますが、コイントスの結果が勝敗に直結する場面は記憶にないです。それくらい珍しい対戦でもありました。
今後はイトウシュン選手がコインを投げるだけで盛り上がりそうです。
みんなの印象に残る試合ができたことは嬉しいですが、僕自身はコインを投げる効果のカードはあまり好まないので期待には沿えないかもしれません。とはいえ今回みたいにこんらんで仕方なくという場面はあるかもしれませんね。ドキドキするので嫌なんですが(笑)。
優勝後のインタビューでも過去の対戦を思い出して、今回も裏が出るだろうと思って投げたと仰っていましたね。次回からはかなりいいイメージを持ってコインを投げられるのでは?
そうですね。少しは自信をもって投げられるかもしれません。そもそも、ここまで重要な場面でのコイントスはもう2度とないのではないかとも思います。
長年ポケカと本気で向き合い続ける理由
これだけ長い間ポケカをプレイし続けている理由は何ですか?
ひとつはポケモンが好きだから。もうひとつは、世界大会で優勝したいという目標を持ち続けているからです。途中で諦めたら負けたみたいで悔しいので。とはいえいっしょにポケカをする仲間がいなかったら続けられないかもなと思います。まぁそんなことはまず起きないだろうと信じていますけれど。
そう言い切れるくらい信頼する仲間がいるということですね。ちなみに、もし世界大会で優勝できたらモチベーションはどうなると思いますか。
それでも関係なくポケカは続けていると思います。シンプルにポケカで対戦するのが楽しいですし、いろいろなカードを使うのが好きなので。使ってみたいデッキはまだまだありますし、新しいカードもどんどん増えるのでやりたいことはいくらでもあります。ポケカを辞める未来は想像できないですね。
世界大会の相棒2枚がタッグチームに!
じつはピンプクがいちばんのお気に入り
好きなカードを教えてください。
いっぱいありますが、1枚挙げるとするならサーナイト&ニンフィアGXですね。サーナイトもニンフィアも大好きなポケモンですし、「ポケモンワールドチャンピオンシップス2017」ではニンフィアGXとサーナイトGXを組み合わせたデッキを使っていたんです。その2枚のカードがタッグチームとして1枚になるということで、発表されたときはすごく嬉しかったのを覚えています。「チャンピオンズリーグ2020
東京」ではサーナイト&ニンフィアGXデッキを使ってTOP8に残れたので、思い入れもあります。
イトウ選手といえばデデンネのイメージもあります。
SNSのアイコンがデデンネのイラストだからですかね。基本的にフェアリータイプを中心にかわいいポケモンたちが好きなので、デデンネも好きです。でもじつはいちばん好きなポケモンはピンプクで、ハピナスVのデッキを組んだのはスペシャルアートレアのイラストにピンプクが描かれているからというのが大きいです。ピンプク自身はなかなかカード化されませんが、最近はスボミーを筆頭にベイビィポケモンがカード化される流れがある気がしているので期待しています。
弟もCL優勝経験のある強豪プレイヤー!
イトウ選手が注目している選手は誰かいらっしゃいますか?
せっかくなので弟のイトウユウを挙げさせてください。僕と同じタイミングからポケカを始めてずっと続けているプレイヤーです。「ポケモンワールドチャンピオンシップス2017」でシニアリーグTOP4、「チャンピオンズリーグ2019
千葉」でオープンリーグ(スタンダードレギュレーション)優勝といった実績もあります。
それぞれがチャンピオンズリーグで優勝経験があるというのはすごい兄弟ですね!
もう十数年いっしょにポケカをやってきているので、思考も似ているところが多くて。デッキの作りかたも身についているし、いまは僕が社会人で弟はまだ学生ということもあってデッキ構築や思考の部分は弟を頼っている部分も少なくないです。普段一緒に練習するメンバーはほかにもたくさんいますが、いちばん信頼しているのはやはり弟ですね。
いつか兄弟対決が実現したら盛り上がりそうですね……!
自宅が最高の練習環境
兄弟での対戦でプレイングを練習
よく行くジムはどこですか?
最近はジム自体にあまり行かなくなってしまいました。昔はレベルの高い相手と対戦するために外へ行かなければいけないと思って通っていたのですが、いまはありがたいことに弟をはじめ身近にレベルの高いプレイヤーがたくさんいてくれるので……。とくに弟といっしょに練習することが多いので、自宅で完結できちゃうんです。
普段はどのような練習をされているのですか?
大会の1週間前には必ず使用するデッキを確定させてプレイングの練習に集中すると決めていまして。逆に言うとそれまではひたすらいろいろなデッキを組んでは試して組んでは試してを繰り返しています。
ほかの選手よりも幅広いデッキの選択肢を持っていそうですが、1週間前には必ず決めているんですね。
はい。1週間は同じデッキを集中して練習する期間がないと大会当日のパフォーマンスが悪くなると考えています。もう10年以上そのスタイルでやってきているので、習慣のようなものです。直前になってより強そうなデッキを思いついたとしても、プレイに自信のあるデッキの方を選択するようにしています。