
4月5日(土)と6日(日)に開催された「チャンピオンズリーグ 2025 宮城」(以下「CL2025 宮城」)の各リーグ優勝者にインタビューを実施しました。実際に使用されたデッキとあわせてご紹介します。
マスターリーグ優勝 イトウ シュン選手

―――優勝おめでとうございます。今のお気持ちを聞かせてください。
大型大会での優勝は約15年前にあった都道府県予選での東京大会以来で、当時はジュニアリーグでの参加でした。チャンピオンズリーグで優勝できたことは、とても嬉しいです。
―――決勝戦は白熱した戦いで、幕引きも非常にドラマチックでした。勝因は何だったと思いますか。
最後のコイントスでオモテが出たことですね(笑)。対戦の内容は完ぺきだったとは思えません。あそこでウラが出ていれば結果は逆になっていましたし、勝った気はしないというのが正直なところです。良かった点を挙げるとすれば、ドラメシヤでワザ「エヴォリュ ーション」を使ったターンでしょうか。あの場面はドラパルトexで攻撃することも可能でしたが、つぎの相手の番にリーリエのピッピexが出てきてドラパルトexは倒されていたはずです。そうなるとこちらは攻めを継続できなくなるので、落ち着いて後続を準備できたのは良かったなと思います。
―――ちなみに、コイントスの瞬間はどんな心境でしたか。
きっとウラが出るだろうと考えていました。というのも、じつは似たような経験が過去にありまして。「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2018」の配信卓で、マッシブーンのワザ「ふりまわす」の効果でコインを2回投げて1回でもオモテが出れば勝ちという場面で2回ともウラが出て負けたことがあるんです。あのときのことが頭をよぎって今回もダメかなと思っていたのですが、今回は運が僕に味方してくれました。
―――内心ちょっと弱気だったんですね。意外でした......!
山札にはまだポケモンいれかえが残っていたので、引ければコインを投げずに済むと思っていたのですが。そこまでの運はなかったみたいです(笑)。攻撃せずに番を返したらどのみち負けるので、あそこは覚悟を決めました。
―――結果として劇的な勝利を飾られたわけですが、相棒としてともに戦い抜いたデッキについてこだわりのポイントを教えてください。
一般的なドラパルトexデッキと異なる点としては、ガチグマ アカツキexとポケモンいれかえを両方とも採用しているところでしょうか。ドラパルトexだけでは不利を取るタケルライコexデッキへの対策として入れています。タケルライコexに毎番、ドラパルトexを倒され続けるとエネルギーの供給が追い付かなくなりますが、エネルギーなしで攻撃できるガチグマ アカツキexがいればこちらも絶え間なく攻撃し続けられます。ワザ「ブラッドムーン」のダメージでちょうど倒せるのも優秀です。
―――デッキに関してもうひとつ。配信内でのインタビューでサーナイトexデッキとの対戦について話されていた際に「リーリエのピッピexは出てきたらラッキーだと思って対戦をしていた」と話されていました。この理由を具体的に教えてもらえますか?
ドラパルトex対策としてのリーリエのピッピexはミュウexとセットで出さないと効果が薄いので、そもそも場に揃えさせないように意識して立ち回っています。が、仮に揃って出てきた場合でもサイドを取りきられるような詰めの局面でなければ問題ないと考えています。こちらのドラパルトexとドロンチを倒せば何もできなくなると思って出てくることが多いのですが、こちらにはガチグマ アカツキexが控えているので継続して攻撃ができます。サーナイトexデッキとの対戦では基本的にサイドを1枚ずつ取っていく展開になりがちですが、2枚取れるポケモンが2体出てきてくれるという意味でラッキーだなと。
―――なるほど、ここでもガチグマ アカツキexが効いてくるんですね。
はい。このデッキでは重要な役割を担っています。実際、今回戦った全19試合のうち半分くらいはガチグマ アカツキexで試合を決めました。対戦相手の方もガチグマ アカツキexが入っているのか、と驚いていた印象です。今後はそういった奇襲のような強みは無くなると思いますが、知られていても十分に強力だと考えています。
―――ドラパルトexデッキにはガチグマ アカツキexがいるというのが常識になるかもしれませんね。それでは最後に、「ポケモンワールドチャンピオンシップス 2025」(以下、「ポケモン WCS2025」)へ向けて意気込みをお願いします。
「ポケモン WCS2025」でも表彰台に立てるように、全力で頑張ります。
シニアリーグ優勝 スギタ コウキ選手

―――優勝おめでとうございます。今のお気持ちを聞かせてください。
僕はこれまでチャンピオンズリーグで盾を獲得した経験が2回しかないのですが、その2回とも3位だったんです。それがすごく悔しかったので、今回初めて優勝できて本当に嬉しいです。
―――2回「しか」というところに目標の高さを感じますね。念願だった初優勝の喜びは、どなたに伝えたいですか?
いつも一緒に練習してくれている仲間たちです。大会に向けて、環境上位とされているデッキを相手に何度もくり返し練習をさせてもらっていました。とくにサーナイトexのデッキやドラパルトexのデッキは重点的に練習していました。実際、今日何度もそのふたつのデッキとマッチングして勝つことができたので、練習の成果がでたと思います。なので優勝できたのは仲間たちのおかげです。みんなに感謝を伝えたいです。
―――今回のデッキを使用することに決めた経緯について教えてください。
このデッキを初めてみたとき、運命を感じたといいますか。ひとめぼれして、すぐに使うことを決めて調整を始めました。僕はもともと手札をたくさん増やして序盤から速度重視で攻め立てるタイプのデッキが好きなのですが、このデッキには理想の要素が詰まっているんです。
―――運命の出会いだったんですね。調整の際にとくにこだわったポイントを教えてください。
ボスの指令を3枚にしたところです。通常は2枚の採用だと思うのですが、1ターン目にイキリンコexの特性「イキリテイク」やゼイユを使って手札をトラッシュすることが多く、ボスの指令を使える回数が減りがちというのが気になったので枚数を増やしました。ともだちてちょうも合わせて、ボスの指令が使えなくて困るということはかなり減ったと思います。また、ボスの指令が3枚入っていることは対戦相手の視点だと警戒しづらいだろうと感じました。トラッシュにボスの指令が2枚ある状態での3枚目のボスの指令がうまく決まった場面が何度かあり、そういう意味でも増やしてよかったなと思っています。
―――それでは最後に、「ポケモン WCS2025」へ向けて意気込みをお願いします。
前回は70位で終わってしまったので、つぎはそれよりももっと高い順位を目指して、これからも仲間たちといっしょに練習を頑張っていきたいです。
ジュニアリーグ優勝 ハシモト ユウヒ選手

―――ユウヒ選手は「チャンピオンズリーグ 2024 横浜」以来2度目の優勝ですね、おめでとうございます。今のお気持ちを聞かせてください。
「チャンピオンズリーグ 2025 東京」では一歩届かず準優勝で、優勝できたのは約1年半ぶりなのですごく嬉しいです。
―――戦績のアベレージが凄すぎますね。今日の対戦の中でとくに印象的だったものはありますか?
予選の最終戦、リザードンexとピジョットexのデッキとの対戦です。フトゥー博士のシナリオやポケモン回収サイクロンを使われて、なかなかリザードンexを倒せずサイドが取れない展開が続いていました。残りのサイドの枚数が自分は残り6枚、相手は残り2枚の状況になったのですが、そこであえてサイドを取らずにダメカンを蓄積させるプレイを選択しました。というのも、こちらのベンチにキチキギスexがいたので、サイドを1枚でも取ってしまうとワザ「バーニングダーク」でキチキギスexが倒されて負けてしまいます。そこからワザ「ファントムダイブ」と「カースドボム」を駆使して相手のリザードンex を進化元となるポケモンもあわせてきぜつさせて、逆転することができました。苦しい状況から綺麗に逆転できたので、印象に残っています。
―――ドラパルトexデッキらしい大逆転ですね! 今回のデッキを選択した理由について教えてください。
「チャンピオンズリーグ 2025 東京」ではサーナイトexのデッキを使っていたのですが、レギュレーション変更の影響で戦い方が変化したと感じています。特性「リファイン」のキルリアが使えなくなり、じっくり戦うというよりは速攻寄りのデッキになった印象です。それが自分に合わないなと感じたので、以前のサーナイトexと使用感が似ているデッキとしてドラパルトexを選びました。ドラパルトexのワザ「ファントムダイブ」やマシマシラの特性「アドレナブレイン」を活用してダメカンを蓄積させて、いっきにサイドをまとめ取りするような戦い方は得意なので手に馴染みました。
―――デッキのこだわりポイントについて教えてください。
ボスの指令を2枚、タケシのスカウトとジニアを1枚ずつ採用したことです。どちらもスボミーのワザ「むずむずかふん」を意識してのものです。相手のバトル場にスボミーがいるとき、ベンチのポケモンを呼び出してワザ「ファントムダイブ」を使うことで相手のポケモンを同時に倒せます。このとき、カウンターキャッチャーはワザ「むずむずかふん」の効果で使えなくなっているので、ボスの指令を2枚採用することでこの動きの再現性を高めています。タケシのスカウトとジニアは、グッズが使えない状況でポケモンを山札から持ってくる手段として採用しています。タケシのスカウトでは進化ポケモンを1枚しか持ってこられないので、ジニアも採用して状況に応じて使い分けできるようにしています。
―――実際の対戦の中で、とくに活躍したカードは何でしたか?
勇気のおまもりです。序盤にお互いのスボミーがワザ「むずむずかふん」で攻撃しあうシチュエーションになることが多く、その際に有利が作れます。その有利を使って、後の展開のための準備が行えたので入れていてよかったと思います。
―――かなりスボミーを重視したデッキ構築になっているんですね。今大会に向けて様々な準備をされてきたかと思いますが、いま振り返って「やっていてよかった」と感じるものはありますか。
練習の際にタケルライコexデッキの対策を重点的にやっていたことです。環境の上位にいるデッキに対して安定した勝率を出せるようになったのは大きな意味があったと感じます。
―――以前、プレイヤー名鑑のインタビューで師匠の指導力が凄いと話されていましたが、今回もいっしょに練習されていたのでしょうか。
はい。タケルライコexのデッキ対策の練習もずっと師匠が相手をしてくれていました。今回優勝できたのも師匠のおかげだと思っています。
―――師匠もきっと喜ばれていることと思います。それでは最後に、「ポケモンWCS2025」へ向けて意気込みをお願いします。
ハワイで行われた「ポケモン WCS2024」では17位でトーナメントに上がることができなかったので、まずはトーナメントに上がりたいです。そしてもちろん、優勝を目指して頑張ります!
ポケモンカードにまたひとつ歴史が刻まれました。それはマスターリーグ決勝戦で起きました。対戦時間をフルに使った一進一退の攻防から、最後はこんらん状態のドラパ
ルトexがサーナイトexを攻撃。こんらん状態のポケモンがワザを使うとき、コインを投げてオモテなら成功、ウラなら失敗して自身が30ダメージを受けます。ドラパルトex側
のイトウシュン選手が投げたコインは配信画面の枠外へと飛び出しましたが、直後に彼が力強く握った拳はその結果がオモテであることを映していました。ドラパルトexが収録された「変幻の仮面」が発売されてから約1年。つねに強力なカードだと評価はされつつも、チャンピオンズリーグのマスターリーグでは優勝経験がありませんでした。そしてイトウシュン選手も古くからポケモンカードをプレイし、ポケモンWCSにも何度も出場している強豪プレイヤーですが、チャンピオンズリーグでの優勝は初めてです。どこか共通点のある両者がタッグを組んで優勝したことも含め、ドラマチックな大会だったと感じます。
さて、次回の「チャンピオンズリーグ 2025 愛知」は5月3日(土)と4日(日)に開催されます。そしてこれが今シーズン最後のチャンピオンズリーグとなります。愛知ではどんな物語が繰り広げられるのか、どうぞご期待ください。