8月18日からアメリカで始まる世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス(以下、ポケモンWCS)」。こちらに日本チャンピオンとして出場するミヤモトミサキさんにインタビュー! ポケモンカードを始めたときのエピソードや練習方法などについてうかがいました。競技プレイヤーを目指すことになったきっかけは、まるで運命に導かれたような出来事だったといいますが......?
ポケモンカードとの出会い
――今日はよろしくお願いします。まずは、ポケモンカードゲームを始めたきっかけからお聞きしたいのですが。
「12、3年前になるかと思うんですが、仙台に住んでいて、小さなデパートで開かれていた『はじめて教室』に、3つ上の姉と一緒に行ったのがきっかけです」
――前からゲームソフトのポケモンは遊んでいたんですか?
「母親や姉と一緒にポケモンをやっていました。ちゃんとやったのは『ポケットモンスター サファイア』からですね。
――では、お姉さんと一緒に遊んでいたんですか?
「最初は姉と遊んでいて、次第にお店で開催されているイベントに参加するようになりました。初心者だったので、デッキ構築も何もわかっていなくて、ボロ負けでしたけど」
――最初はそうですよね。
「で、当時は現在の『ポケモンカードゲーム プレイヤーズクラブ』 の前身のようなものがありまして、始めたばかりのときにとりあえず入っておいたんです。そうしたら、2005年のポケモンWCSに2,3人が招待されるというキャンペーンにたまたま抽選で選ばれて......」
――えーっ、すごいですね。
「わけもわからずポケモンWCSに参加させていただいたんですが、もちろん全然勝てない。せいぜいルールがわかるだけというレベルでいきなりだったので、せっかくの世界大会を楽しめなかったのがすごく悔しかったです。でも、ポケモンWCSというすごいものがあるんだと知って、強くなりたい、また行ってみたいという意識が生まれました」
――そんな出会いがあったとは、運命的ですね。
師匠と上を目指す
――当時、強くなろうと思ったときに参考にするものってあまりなさそうですよね。ネットの情報とかですか?
「ネットはそこまで盛んではなくて、店舗大会に行ったとき、強い人にデッキの組み方などいろいろとアドバイスをいただきました」
――師匠がいたんですね。
「それから、初めて地方大会に参加しました。最初は予選落ちだったんですが、2、3回目に出場した2007年だったかな、小学5年か6年のときに宮城の地方大会で、なんとか勝ち上がってベスト4になれました。私はボーマンダが大好きだったので、強い人に相談して、カメックス/ルギア/ボーマンダのデッキを組んでもらったんです」
――その師匠ってどんな人だったんですか?
「実際、師匠になってくれたのは1人ではなくて、何人かいたんですよ」
――ああ、いろいろな師匠が技を授けてくれたんですね。
「みんな親切に教えてくれました。でも教えるときは熱くなって、『なんでそこでそんなワザを使うんだ!』とか、スパルタ教育でしたね(笑)。でも、そのときは何で怒られてるかもわからないようなレベルだったので、『あ、はい......』って右から左に流してました(笑)」
――相手が小学生でも、ゲームの前には年の差なんて関係なく、本気で教えてくれたんですね。
世界大会へのリベンジ
「シニア時代の2010年に予選免除の権利をもらって、ラストチャレンジの東日本大会の本戦に出て、全国大会への参加権利が取れました。ガブリアスとゲンガーのデッキを使って全国大会ベスト4になれて、トラベルアワードつきのDay2からの権利を獲得しました。2005年に初めてポケモンWCSに行ってから、5年かかってしまいました」
――いや、5年で行けるのはすごいと思います。ハワイでのポケモンWCSはいかがでしたか?
「惜しくも38位でした。32位までに入れたら、その年限定のDSがもらえたんですよ。それが欲しかったのと、試合に負けた悔しさで大泣きしました」
――世界大会って、日本とはどう違うんでしょうか?
「開会式から、みんな大声でうわー!って感じでノリがよくて、まったく雰囲気が違いますね。あと日本にはない、デザインがかっこいいいろんなデッキケースやスリーブもあって、それを集めるのも楽しいです」
――なるほど、いいですね。
「それから今に至るまでに2回、ポケモンWCSのラストチャレンジまでは行ったんですが抜けられず、日本代表として今年行くのが3回目になります」
――今年の世界大会の目標は何ですか?
「海外プレイヤーと言葉が通じなくてもゲームはできますけど、英語が話せないので友達になったりという感じではなくて......今年はがんばって英語で話したい、というのはあります。成績的には最低でもベスト8には入りたいですし、欲を言えば優勝したいです」
――おおー、がんばってください!
全国大会に向けての練習
――今回日本チャンピオンになったときのデッキは、ややテクニカルでしたよね。
「よるのこうしんとマーシャドーGXのデッキが多いに違いないと予想していたので、それに勝てるデッキをと思って持っていきました。ただ決勝の相手はオーロットで、ロックされるとほとんど動けないので、相性的にはほとんど負けに等しいんです」
――それでも勝てたのはなぜだと思いますか?
「私のデッキにギラティナが入っていたのが大きかったと思います。相手のブレイク進化ポケモンの特性が働かず、オーロットのロックは消えますので」
――ギラティナを入れたのはどうしてですか?
「『チャンピオンズリーグfinal』のときに使われているデッキをチェックして回ったらオーロットが多くて、今の師匠が『ギラティナを入れないとダメだね』と言ったので。入れてもまだ相当不利なのに変わりはないんですが、運よくなんとか勝てて自分でも驚いています。オーロットは先攻で進化されたら終わりだから、あとは祈るしかないという感じで、練習もほぼしていなかったんです。でも、先攻1ターン目で進化されなかったので、本当に運がよかったなと思います」
――普段は大会に向けてどういう練習をしているんですか?
「非公認の大会とかで、どんなデッキがいるか情報を集めて、いそうなデッキの予想を立てて、身近な練習相手とそのデッキ同士でたくさん対戦して、相性のデータを集めるというのをやってるんですが......」
――メタゲームを分析した上で、もっとも有利なデッキを選ぶんですか?
「でもこのときは、エネルギー加速が強いサーナイトGXを最初から使おうと思っていて、それしか練習しませんでした。『チャンピオンズリーグfinal』の前は、夜中の2時まで練習してたんですよ。つらかったんですけど、あれがなければ勝てなかったと思います」
周囲に支えられて
――今回はマスターでトーナメントを上がってきたわけですが、シニアとはやっぱり違いますか?
「レベルが違いましたね。ジュニア・シニアのときは、みんな使っているデッキが同じと言いますか、単純に強いデッキが使われるんですが、マスターになるとメタを考えたデッキになっていて、一気に環境が変わりました」
――そうすると、デッキを回す練習だけでなく、環境を知るための勉強も自分でやらないといけないわけですか?
「それは1人ではできなくて、最初から今まで、ずっと人に助けてもらってます。本当にさまざまな人に支えられてここまで来られました。もともと学校の部活も早く辞めたいと思っていたくらいなので、自分には競技プレイは長く続かないんじゃないかと思っていたんです。でもポケモンカードに関しては周りの人に恵まれていて、楽しかったから続けられたと思います」
――そうなんですね。
「ポケモンカードは1人でできるものではないと私は考えています。コミュニティで情報交換したり、足りないカードを融通し合ったりという助けももちろんありますが、私の原点は家族で、親がパックを買ってくれて、今まで続けさせてくれたというところにあります」
――親に「いい年になったらそろそろカードはやめなさい」と言われる人もいると思うので、応援してもらえるのはうれしいですね。
「今でも応援してくれます。昔は大会で授業参観みたいに後ろで見てて、『恥ずかしいから応援に来なくていいよ』って言ってました(笑)。でも、成長するにつれて、応援してくれる人がいるだけで心強くなるということがわかってきました」
――その気持ち、わかります。
「宮城のときに組んでいたチームで、『チャンピオンズリーグ2017 宮城』のベスト8になったことがあるんですが、そのメンバー2人も今回一緒に日本チャンピオン決戦戦に出られて、うれしかったですね。2人はポケモンWCSのDay2の権利を獲得することはできなかったんですが、Day1からは参加することになったので、一緒にアメリカに行けるのがすごく楽しみです」
――いいですね!
「チームメンバーのうち1人は高校生で今は福岡にいるんですが、全国大会のとき、自分はぼろ負けしてすごく悔しいだろうに、『代わりに絶対勝って!』って応援してくれたんです。そのときは正直勝つ自信がなかったんですけど、その応援のおかげでやる気になれました。同じように姉からも『私は全敗したけどがんばって』って笑顔で言われて、絶対勝たなきゃ! って気持ちになりましたね。あれがなければ気持ちで負けていたかもしれないので、ありがたいです」
――1人だけだったら「もう負けでいいや」って気持ちになりそうなとき、ほかの人のために負けられない! って思うところは、女性ならではという感じもありますね。男性だともっとシンプルに「勝ちたい」って人が多い気がするので。ちなみに、競技プレイヤーの女性の割合ってどれくらいだと思われますか?
「昔よりだいぶ増えましたけど、全体の2割くらいでしょうか」
――日本チャンピオンになった女性はかなり久しぶりですね。
「18年前に1人いたという話を聞いたことがあります。ただ、マスターとかのクラス分けがなかったころなので、今回なれればマスターリーグという区分では日本初になりますね」
――今回女性が日本チャンピオンになったことで、多くの女性プレイヤーに勇気がわいたと思います。どうしてもカードゲームは男性向けというイメージが強い中、女性でも対等以上に戦えることを教えていただきました。
どうすれば強くなれる?
――競技プレイヤーを目指したいと思う人に、アドバイスはありますか?
「まず、コミュニティを作っていくことだと思います。強くなるにはいろんな方法があると思うんですが、私のやり方はずっと、『こんなふうになりたい』って人を見つけて教えてもらうというものでした。自分から積極的に話しかけて、気持ちを伝えるのがとても大事なんです。でないと、何がしたいのかわからないって思われて、声もかけてもらえないですから。先生という立場の相手じゃなくても、まわりを誘って、巻き込んでやるのがいいと思います」
――今はネットで強いデッキもわかるけど、やっぱり人に教わることによって、苦しい瞬間にもあきらめないようになれるんですね。
「熱心に教えてもらうと、その人たちに感謝の気持ちを表すために、大会で勝ちたいって意識がつくようにもなるかと。私も日本チャンピオンになっていろんな方からお祝いのメッセージをいただき、中には始めたばかりの方もいました。私は正直プレイヤーとしてまだまだなところがたくさんありますが、私でよければお手伝いできることはしていきたいと思っています」
――これからは、教えてもらった分を返していくということですね。さらなるご活躍を期待しています!